2008年04月04日

どんなに曇ってても、あらしの日でも、 おてんとさまが、ちゃんと雲の上で照っててくださる。





「愛読書は」とたずねられたら、迷わずこの本をあげてきた。
いままでも、これからも、幾度も幾度も読みかえす。

『ノンちゃん 雲に乗る』は、わたしの一生の宝物です。

non-chan.jpg



福音館版の初刷は1967年で、わたしが持ってるのは1977年(昭和52年)の第二十四刷。
すこし黄ばんで古ぼけたにおいがするけれど、いまも本棚のいっとう目立つところにさしてある。
ひとり暮らしをはじめるときに、学生時代の思い出のつまった卒業アルバムやら、ネームを暗記するほど読みふけった漫画やら、大切なはずのものをけっこう実家に置きっぱなしにしてきたけれど、この本だけはしっかり連れてきた。

むかし東京都は「東京府」だったということを学んだのも、アイロンが熱くなるとジミリジミリと鳴るというのを知ったのも、那須ノ与一の「なむはちまんだいぼさァつ!」という掛け声を覚えたのも、ぜんぶこの本を読んだから。
この世には「赤痢」というおそろしい病気があるということを教わったのもこの本だった。
小学生のわたしは熱を出すたび(当時はとても病弱だった)、ノンちゃんのように何百本という注射をしたりゴムの管をおしりからおなかへ通されやしないかと、お布団の中でひそかにおびえたものだ。
そうそう、うちの弟はみんなに「のんくん」と呼ばれているが、昔々はよく高い高いしながら「ノンくん、雲に乗る〜!」なんてからかったりしたっけ。


とにかく本が好きで好きで母親の使ってた育児百科まで読みあさるほど本が好きだった少女のころから、いつしか編集者として本を作る側にまわっていた今日まで、『ノンちゃん』はつねにわたしの親友でいてくれました。

この本への思いは語ると尽きないのだけれど、
一番好きなのはにいちゃんのタケシ。

こいつがいいんだ。
いたずらで、あばれんぼうで、犬のエスと誰よりも仲良しで、「敵ながらあっぱれ!」が口ぐせで、いろんなあだながある男の子。
おとうさんにぶたれたときは、縁側までかけてって外に向かって「うおォッ!!」と泣く。
だけどつぎの日からもいい子にはならない。
タマネギとエビのかきあげをモガモガ食べながら、鉄砲玉みたいに遊びに飛び出していく。
失敗してもめげない。叱られてもぺしゃんこにならない。単純ですなおでいつも前向き。
(ノンちゃんにだって、ほんとはやさしい)

このタケシのことを、雲の上のおじいさんが評して言うセリフが、最高なのです。


「わしの雲みたいな坊主じゃよ! スプリングがきいとる。へこみきりになどなるものか。ちぎれもせんし、きたならしゅうもならん。」


スプリングがきいとる、ってつくづくいい表現だなぁ。
やわらかくて強くて自由なさまがすぐに浮かぶ。






つい、前置きが長くなりましたが。

レイソルが、タケシみたいでいられたらいいな、と思う。



京都戦はとてもよかった。
スカパー観戦で、90分の間、気をはりつめて見ていられたのはひさしぶりだ。ちゃんと疲れた。
どの選手もいい顔をしていたし、ときおり画面にうつる黄色いゴール裏も力強かったです。

古賀ちゃんの偉大さがあらためて骨身に染み、たっちゃんの献身がまぶたに焼きつく。
こういう試合で決めるチュンソンはもちろん役者だ。
みんなの必死なランニングがあった。
京都がロングボールほうりこみ作戦で来なかったことも大きい。
カトキューの采配はいやらしく神経にさわり、徳重や渡辺や勇人や田原はおそろしかったけど、なんとなく正々堂々正面玄関からなぐりこんでくれたようで、だからこそレイソルもレイソルらしさを発揮できたのかな。
今回は勝てたけど、もうちょっと京都のフィニッシュの精度が上がってきたりするとムニョムニョムニョ…な気もする。
とにかく、いい試合でした。
京都とまたやれる日が楽しみだ。




それでも、勝てた要因はやっぱり“気持ち”が一番大きかったんだろうなと思う。
ただ、「かなりの危機感をもって…」「連敗は避けたい…」とよくある言葉で片づけるのはちょっとちがう気がしたんですよね。
しばらく勝ててないから勝たなくちゃ、とか。前節負けてるから勝たなくちゃ、とか。ケガ人多いからその分補わなくちゃ、とか。
マイナスを埋めてなんとかプラスにしなきゃ、なんていじましい努力じゃなくて、
西京極のピッチで表現されてたことは、もっとシンプルだった気がする。



勝ちたい。
ボールを蹴りたい。
自分の足のギリギリの、そのまた一歩先まで走りたい。
思いきって、やるだけ。

ああひさしぶりに余白のない闘志を見せてもらえた、と思った。


へこみきりになどならず。ちぎれもしないし、きたならしくもならない。
チームも選手もサポも、ちょっぴりスプリングをとりもどせたんじゃないかな。
ここからもっと、はずんでいきましょう。
ずっとずっと、雲の上につきぬけるまで。

どんなに曇ってても、あらしの日でも、
おてんとさまが、ちゃんと雲の上で照っててくださるんだから。










石井桃子さんの安らかな旅路を、心よりお祈りしつつ。







posted by きなこ at 22:06| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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